社外CFOの活用事例(4)月次決算の早期化

4. 月次決算を早めたい

タイムリーに経理報告を受けなければならない場合とは

ベンチャー・中小企業の場合、税理士の決算書は、1年に1回見る程度で、試算表などは、ほとんど見ない、という経営者もいらっしゃいます。


しかし、本来は、これでは困ることも多いはずです。 経理担当者や顧問税理士から、2か月遅れで試算表が出てきて、困っている、という方も、非常に多くいらっしゃいます。


次のような場合には、決算の早期化は必須の経営課題です。 これらの場合、決算情報は、忘れたころに見ても意味がありません。


  • 会社や、ある部門が赤字で、早期に黒字化を図らなければならない。

  • 利益率の改善に取り組んでいる。

  • 仕入が重要な業種で、資金の残高を常に把握しておかなければならない。

  • 上場会社または上場準備会社で、計画した利益の達成が必須。

  • 投資家や金融機関から支援を受けており、約束した利益の達成が必須。

反対に、日々伸び続けるマーケットで、ライバルよりも1日でも早く、陣地を広げなければならないというような状況では、決算書をゆっくりと見ている場合ではないでしょう。 そのような場合には、売上と利益の結果を聞いて、大きな動きだけを、経理責任者に確認できれば十分です。


一方で、上記のように、利益の金額を追いかけていくことが経営課題になっている場合には、報告が遅いことは、重大な問題です。
このような状況において、会社の状況をタイムリーにとらえ、報告することは、社外CFOの重要な役割です。

3営業日で速報値、10営業日で試算表が目標

速報値は月初3営業日を目安とします。 業務システム(販売管理システム)が、1営業日に締まるのであれば、1〜2営業日でも、速報は出せます。


速報での報告は、「売上○○万円、経常利益△△万円」というで構わず、細かい経費まで報告する必要はありません。 また、予算や前年同月との対比も、記載しておくべきでしょう。


確定値は、10営業日を目安とします。 ここでは、売上と経費は、すべて計上しておく必要があります。


「税理士に強く言おう」、「がんばって早く入力します」では解決しない

どうすれば、「3営業日で速報値、10営業日で確定値」を提出できるのでしょうか?
顧問税理士を呼んで、強く言ってみても、まず解決しません。


「ほかの顧問先もあるので、御社を最優先にすることは、できません」と言わないまでも、そのように取り扱われてしまいます。 これは、税理士のビジネスモデルから、仕方のないことです。


決算の早期化に取り組むのであれば、自社の社員に経理を担当させる、経理内製化が不可欠です。 99%の上場企業は、経理は自社で行っています。


経理内製化と合わせて、行うべきこと

また、自社の社員に経理を担当させた場合でも、解決しない問題があります。 それは、「仕入先から請求書が届くのは10〜15日ですから、3日に速報を提出することはできません」と言われてしまう問題です。


これを解決する方法は、次の3点にあります。 1. どのような売上と経費が発生するか、事前に予測を立てていること。
2. 会社の状況を、タイムリーに把握していること。
3 経費を「支払ったとき」ではなく、「使ったとき」に認識できる仕組みを作ること。


つまり、期初に予算を作ったときに、どのような経費が発生するのか、ある程度予想できているのです。 そして、日々会社にいるCFOなら、想定外の経費が発生したという情報も、耳に入っているはずです。
売上と粗利の情報さえ受け取れば、そこから予想経費を差し引いて、利益速報を提出できるのです。


つまり、税理士や経理の担当者が頑張れば、決算を早期化できるというものではなく、CFOとして、会社の収益・費用構造をきちんと把握し続けおくことで、決算早期化を実現できるのです。


また、一般的な中小企業の経理担当者や税理士は、経費を支払ったときに、計上します。しかし、これでは決算早期化はできません。 請求書が来るまで、金額が分からない経費というのは、数えるほどしか、ありません。事前に見積書も取らずに発注し、請求書が届くまで、いくら使ったか分からないという経費が、いくつあるでしょうか?上司の承認もとらずに経費を使い、請求書を経理に回す社員がいるでしょうか?


そういうことは、基本的にはないわけです。つまり、会社のなかで、きちんとしたルールと仕組みさえ作っておけば、請求書が届くまで、決算を締められないということは、ないのです。


このような仕組みづくりをするためには、それなりの経験を積むことが必要です。 そういった仕事を実行していくことが、プロの社外CFOの仕事です。


決算早期化のために、システム投資は必要か?

システムに明るい方は、「決算を早期化するためには、相当なシステム投資が必要なのではないか?」と思われるかもしれません。 確かに、システムがまったくない会社で、3営業日目に速報値を提出するのは、困難です。


しかし、私が社外CFOとして関与した会社で、システムがないから、決算を早期化できないという会社は、1社もありません。 どんな会社でも、顧客や債権を管理するために、最低限やるべきことはやっています。
その情報を普通に使えば、決算早期化は、十分に実現可能です。


また、決算を早期化するために、業務部門が、経理に合わせて仕事をする必要も、ありません。 本来、管理部門は業務部門に奉仕するための存在です。もちろん、協力しあう必要はありますが、経理に提出する資料のために営業がたくさんの残業をする、というのは本末転倒です。そのような仕事は、最低限の規律を守る範囲に抑えなければなりません。


システムは、会社の利益を増やすために、作るものです。 経理のためにシステム投資をする、という発想は、持つべきではありません。


<<上場予定の会社必見>> 決算短信の開示まで45日もあるんだから???

いつか株式公開したい、と思われている会社の皆さんは、「45日ルール」という言葉をご存知かもしれません。
決算日を迎えたら、その後45日以内に、決算の開示をしなければならない、というものです。 つまり、3月決算の会社なら、5月15日までに、「決算短信」という書類をつくって、証券取引所に提出しなければならないわけです。


「え、45日も待ってもらえるの?だったら、10営業日で締める必要なんてないじゃないか。」と思われるかもしれません。 しかし、そういうことでは、ないのです。


そもそも、月次決算を締めなければ、税金の計算ができません。税金の計算をした後でなければ、外部に開示する決算書をつくれません。 そのうえ、上場企業の決算というのは、一般的な中小企業よりも、何倍も複雑です。
税効果会計、減損会計、資産除去債務、退職給付会計、連結決算など、たくさんの作業を踏まなければなりません。
また、「決算短信」を書く作業自体も、それなりの時間がかかります(私がやっても1〜3日、慣れていない方なら1週間以上かかります)。


ですから、通常の売上、仕入、経費などを入力する「月次決算」など、10営業日くらいで終わらせておかなければ、「45日ルール」を守れないのです。

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